ご挨拶

 平成284月に発生した熊本地震、平成297月の九州北部豪雨、同年9月の台風18号による浸水被害など、近年、自然災害が多発し、かつ被害が甚大化しています。今後、南海トラフ地震による津波被害も想定され、これら自然災害への対策が喫緊の課題となっています。大分県でも国土強靭化計画を策定し、その対策を推し進めていますが、その実現のためには、土木・建築構造物の整備が特に重要な要素であると言えます。 

 一方で、高度経済成長期以降に建設された構造物の多くが老朽化し、対策が必要な多くの構造物が存在しています。しかしながら、予算的な制約から、それらすべての構造物を解体して新規に建設することは不可能であり、多くの構造物に対して補修・補強を施して延命化を図る必要があります。その際、特にコンクリート構造物においては、その劣化状態の把握と将来における進行予測を行い、さらにそれに対して最適な補修補強方法を選定する適切な維持管理が求められます。また、対象の構造物に優先順位を付け、対策を戦略的に行う必要もあります。もちろん、新設の場合には高品質で高耐久な構造物の建設が求められます。 

 構造物の建設、劣化診断や維持管理に関する技術の進歩は目覚ましく、技術者にはそのような最新技術に関する情報を得て、常にレベルアップを図ることが求められていますが、現状は技術者個人や個々の企業の努力に委ねられています。技術者不足が叫ばれるなか、大分県内の技術者を効率的に育成するには、産学官が連携する必要があると考えます  

 このような現状を鑑み、本研究会は、産学官で連携し、大分県内の様々な構造物の建設や維持管理に携わる技術者および企業の技術力の向上を目指すことを目的に設立いたしました。まずは、産学を中心とした連携での取組みですが、将来的には官との連携を図り、産学官が一体となって様々な課題に取り組めるような組織に発展させるべく努力していきたいと思います。安全・安心な社会環境の実現のためにも、皆様のご理解とご支援をお願い申し上げます。  

 一般社団法人 おおいた産学構造物研究会 代表理事 大谷俊浩